VE基礎講座

VE用語集


(1)VE投資倍率とは

VEの適用による経済的効果を示す数値こと。VEの適用によって得られる成果と、 そのために投資した費用との比率で計算される。
VE投資倍率=(年間正味節約額)/(VE活動に投資した総費用)
VEでは「詳細評価」ステップで活用され、VE適用の成果を示すために使用される。数値が高ければ高い程、良いとされる。


(2)具体化のサイクルとは

VE実施手順の「具体化」で、価値の高い代替案を作成するために、アイデアの利点・欠点分析、欠点の克服、 洗練化の活動を粘り強く繰り返すこと。機能別に発想されたアイデアを組み合わせたものは利点と欠点を合わせ持つために、 チームメンバや社内外の専門家から情報収集し、欠点を克服し洗練化する必要がある。


(3)VEの基本原則とは

VEを正しい方向に誘導するための法則であり、VE活動の行動指針である。使用者の満足を優先する「使用者優先」、 機能を思考の原点とする「機能本位」、創造力を発揮してアイデアを出す「創造による変更」、専門家の知識を結集する 「チームデザイン」、機能とコストの両面から考える「価値向上」の5つの原則から成る。


(4)コストテーブルとは

価格の決定、製品仕様の決定、購入品価格の決定などのために種々の原価見積が計算されるが、これらの原価見積を 一定の正確さで、迅速・簡便に計算するために作成された諸々の資料のこと。これを使って、部品や加工などのコストを一定の 基準で算出する。VEでは機能評価やアイデアの評価で活用される。


(5)Blast、Create、Refineとは

米国GE社のマイルズ氏が提唱したVEの基本的な考え方である。「①Blast:発破をかけて砕いて、②Create:創造し、③Refine:洗練化せよ」という意味。 従来の方法を破棄して達成すべき機能に焦点をあて、優れたアイデアを創造し、洗練化させ、価値の高い代替案に育て上げることの重要性を示す。


(6)シネクティクスとは

米国ゴードン氏が開発した問題解決のためのアイデア発想技法の一つである。シネクティクス(Synectics)とは「異なった一見関係の無い要素を結びつける」 ということを意味し、類比を活用してアイデアを発想する。直接的、象徴的、人格的類比がある。 VEのアイデア発想技法の一つで多くのアイデアを発想するために活用する。


(7)価値標準とは

機能評価値を求めるための基準のことである。これには特定の使用機能について 理論的に求めた理論的価値標準と過去の実績から見て実現可能な最小コストな どを意味する実績価値標準がある。VE実施手順の機能評価段階で活用する。 する。前者は客観的なコスト基準となり、後者は現実的な基準となる。


(8)Worthとは

機能評価値のこと。必要な機能を果たすための「あるべきコスト」で現行コストとの 相対比較によって価値の程度を求める際の基準になる。VEによる設計や再設計を 行う場合の「コスト目標」になる。VE実施手順の機能評価段階で求め、その求め方 には実績価値標準、アイデア想定、機能重要度比較による方法などがある。


(9)ライフサイクルコスト(LCC)とは

Life Cycle Costの略であり、ライフサイクルコストという。企画、開発から調達、製 造、販売、使用、廃棄に至る全ての過程で発生するコストのこと。企業が掛けるコス トだけではなく、使用者が負担するコストも含めたものである。VEでは必要な機能を 達成するめに費やされるLCCを最低にすることを目的としている。


(10)機能の制約条件とは

「機能をどの程度、どのように果たす必要があるか」を示す定量、定性的条件および 法律や規格によるものがある。またそれは機能表現の名詞や動詞に付帯する条件 であり、アイデア評価や代替案評価時に確実に確認する必要がある。VEでは機能 定義段階では明確にするが、アイデア発想時は除いて発想する。


(11)共同VEとは

特定の製品やサービスの価値を創造したり向上させるために、複数の組織体の専 門家でチームを編成しVEを適用することをいう。共同VEではチーム運営、成果の 配分などVEの適用について、関係者間で事前の合意が必要である。取引先との VEなどもこの共同VEの一つで、効果拡大や取引先のVE浸透などを目的とする。


(12)埋没原価とは

VE実施手順の代替案作成段階において、代替案選択の意思決定の際、比較す る案の優劣になんら関連しない原価のこと。例えば、原価償却費や固定資産税な どはそれが保有される限り発生するもので、通常の原価計算では、これらの費用を 製造原価に含めるが、VEの代替案の比較では除外して、優劣を比較評価する。


(13)ROIとは

Return On Investmentの略であり、投資収益率などと呼ばれる。投下した資本 (分母)に対し得られた利益(分子)の比率で、経営のひとつの指標として使われて いる。VEでは年間正味節約額を投入した費用で除した評価指数として、VE 投資倍率があり、アイデアの詳細評価でVE効果の比較などに活用する。


(14)重点機能系列とは

機能系統図において、対象テーマの基本機能を達成するための重点となる機能の つながりで、その製品の基本的な設計方式を決定付ける機能のつながりのこと。 機能系統図では太い線で示され、機能の評価や代替案の発想の重点となる機能 の系列で、対象分野の選定時には確実に選ばなければならない機能系列である。


(15)年間正味節約額とは

代替案の適用によって得られる経済効果を示す一つの指標である。年間正味節 約額は1年間に期待される正味のコスト節約成果であり、(単位当たりの現行コスト -単位当たりの代替案コスト)×年間適用数量-経常外コストで算出される。VE実 施手順の詳細ステップの詳細評価にて代替案の経済性評価などで使用される。


(16)機能評価とは

VE基本ステップの第2ステップのことで、機能に掛かっている現行コストを配賦す る「①機能別コスト分析」、機能に掛けるべきコストである機能評価値を算出する 「②機能の評価」、この2つの差と比から価値改善の優先順位を決める「③対象分 野の選定」の3ステップから成る。目的は代替案作成段階を効率よく活動すること。


(17)必要機能とは

機能の必要性の観点から必要機能と不必要機能に分類され、前者は使用者が必 要とする機能で、後者は必要としない機能をいう。したがって基本機能はすべて必 要機能であり、使用機能、魅力機能も使用者が必要とするかぎり必要機能である。 VEでは不必要機能を排除し、必要機能の確実な達成を保証する。


(18)機能的研究とは

Functional approachの日本語訳であり、問題解決にあたり機能の視点から一連の 体系的方法を適用していく方法論を総称したものである。この具体的方法を手順 化したものがVE実施手順である。機能の視点はものの本質・原点に立ち返ることと もいえるので、問題解決にあたり有効な方法である。


(19)機能評価値とは

特定の機能を達成するためのコスト目標のこと。VE実施手順の「機能の評価」で これを設定し、次の「対象分野の選定」では、この機能評価値と、機能の現行コスト との差と比を比較し、価値改善の優先順位を決める。機能評価値の評価方法には 実績価値標準、アイデア想定、機能の重要度比較による評価法などがある。


(20)機能定義とは

VE実施手順の最初の基本ステップで、対象特有の情報を収集する「①VE対象の 情報収集」、物や事象を名詞と動詞で簡潔に機能に変換する「②機能の定義」、 それらの機能を目的と手段の関係で並べ替えた機能系統図を作成する「③機能の 整理」の3つの詳細ステップから成る。価値ある設計を進めるためのガイドを作る。


(21)現在価値とは

未来のある時点の価値から遡って割引した現在の価値のこと。VE提案を実行でき るのは将来となることが多い。この間に部品価格や市場売価、為替、販売台数、経 済環境などが変わることが考えられる。この実現できる時期の価値を現時点の価値 に置き換えて評価することが重要で、この置き換えられた価値を現在価値という。


(22)DTCとは

Design To Costの略であり、米国国防総省が提案したもので、開発段階で厳しい 目標原価を設定し、性能、原価、日程、掛けるべきマンパワーのトレードオフによっ て、目標原価を達成しようとする管理の考え方である。DTCは使用者が必要とする 機能と目標コストの達成活動であり、この達成手段として最適な手法がVEである。


(23)VE監査とは

企業方針に基づいて総合的な観点から、VEの運用方針、管理、実績などを評価 すること。VE監査は企業内の制度の一つとして確立され、所定の期間に監査項目 について基準を設け、これに照らして合否の判断を行う。引き続いて、その結果を 活かし、VE適用の継続、発展に役立てることがVE活動では重要である。


(24)一般情報とは

色々な場面やテーマに共通的に活用することができる情報で、幅広い情報のこと。 利用の範囲による分類である。VE活動ではVE実施手順の機能評価の後半や代 替案作成段階でこの情報が必要となる。一方、特定の場面やテーマに特有の意味 を持つ情報を特有情報といい、機能定義と機能評価の前半の段階で活用する。


(25)機能分析とは

対象または問題を「モノ」と捉えず、対象が果たすべき「機能」を明確にし、分析を 行うこと。この分析は機能的研究法(Functional Approach)の一環で他の改善手 法と違うVEの最も特徴的なものである。VE実施手順の機能定義、機能評価段階 で使用される。機能系統図を作成し、機能の定性的把握と定量的評価を行う。


(26)消費による配賦計算とは

個々の機能の達成にどんな資源がどれだけ消費されているかを評価してコストを見 積もること。VE実施手順の機能別コスト分析で活用する。現在時点で個々の機能 に掛かっているコストを基準にしているため、他の計算手段(貢献度による配賦、 均等割による配賦)より精度が高く、最優先して使う手段である。


(27)機能分野とは

機能系統図で、ある特定の機能を目的とした場合の下位機能のまとまりをいう。 機能分野を明確にする目的はその機能のまとまりの「現行コスト」と「機能評価値 (あるべき目標コスト)」の差と比から価値向上のアイデア発想を行う機能分野の 優先順位を明確にすることにある。


(28)価値の程度とは

VEの評価指標の一つで、機能評価値を現行コストで除したものを価値の程度とい う。VE実施手順の「機能の評価」で使われる。この値が小さければ小さい程、現行 方法の価値は低く、「1」に近づくよう価値改善を行う必要がある。コスト低減余地と この価値の程度により、価値改善の対象分野の優先順位を決定する。


(29)CVSとは

Certificated Value Specialist の略称で、アメリカのVE協会が認定するVE の専門家としての国際資格である。VEのみならず経済、経営、経理など幅広い分 野の部門の知識、経験、行動、論文などがアメリカVE協会規則に準じ日本VE協 会が定めた基準を満たし、かつ、試験に合格した者のみがCVSとして認定される。


(30)組織的努力とは

対象テーマを改善する時、一人の知識・情報には限りがあるが、多くの有識者の 参加で情報・知識ともに豊富になり、多くのアイデアが生み出される。VEでは対象 テーマについて異なる分野の専門家が集まり創造活動を推進できる組織を確立し 使用者の満足のいく代替案を生みだしていく。これを組織的努力という。


(31)基本機能とは

製品やサービスが果たしている機能、または果たすべき機能の中で、その機能を取 り除くとその対象の存在価値がなくなってしまう機能のこと。機能系統図の最上位 の機能に当たる。VEでは基本機能を元にアイデア発想すると、抜本的改善アイデ アが生まれ、最大級の効果が得られる。


(32)機能系統図の効用とは

機能系統図はVE実施手順の「機能の定義」で定義された機能を目的と手段の関 係で整理したもの。重要機能系列や制約条件などが明確に記載されていることか ら、次の効用がある。設計の意図や考え方が分かる。機能の見直しが図れる。機能 評価やアイデア発想の手掛かりとなる。チームメンバのコミュニケーションが図れる。


(33)広義の機能とは

機能とは製品やサービスが果たすべき目的・働きのことで、その機能の達成度や条 件である制約条件を含んだ機能を広義の機能と呼ぶ。VE実施手順の代替案 作成段階で、アイデア評価や代替案評価に活用される。これに対して制約条件の 付かない「名詞と動詞」のみで定義された機能を狭義の機能と呼ぶ。


(34)特有情報とは

情報の利用範囲の観点から一般情報と特有情報に分類され、前者は色々な場面 で共通的に利用され、後者は特定な場面で利用される情報である。VEでは特有 情報は機能定義と機能評価の前半のステップで必要とされ、製品やサービスの固 有の情報がVE対象を理解するために利用される。


(35)認識の関とは

アイデア発想を阻害する3つの関の一つで、問題の存在に気付かなかったり、問題 を誤ってとらえることから生じる障害のこと。周囲の状況に惑わされて、本当の問題 がつかめないなどの問題点がある。他に「文化の関」「感情の関」がある。VEでは より多くのアイデアを生み出すために、意識的にこれらの関を取り除く必要がある。


(36)限界利益とは

売上高から変動費を差し引いたもの。つまり固定費をゼロと考えた場合の利益を を意味する。予算化された生産台数に対し、増産計画がなされた場合、固定費は 埋没原価と考え、追加生産分の利益は限界利益が全利益と考えられる。VEでは 増産対応時の機種選定や代替案効果の比較時にこれを活用する。


(37)ZBBとは

Zero Base Budgetingの略で、米国州政府予算適正化の1つの方法。ゼロベース 予算制度のこと。予算要求に対し過去の実績ではなく、各省庁が政策ごとに要求 書を作成し、その重要性の順位付けを行うことにより、予算編成をゼロベースから行 う方式である。その手段としてVEが最も効果的である。


(38)コンカレントエンジニアリングとは

設計、資材、製造、検査などを段階的に行うと時間が掛かってしまう。そこで、これら を並行的に行い、後段階で行われる業務を前段階と同時に行い、開発期間の短 縮と開発の無駄をなくす活動をコンカレントエンジニアリングという。この活動にVEを 組み込み、機能とコストの目標を達成させる。


(39)製造VEとは

製造工程や設備、治工具など製造全般に関するVEのことを言う。この製造にVE を適用することで製造工程や設備、治工具、金型などの抜本的改善が図れ、製造 そのものの価値が向上する。製造工程の品質が上がることで、お客様の満足度も 向上でき、価値の高い製品を創造することができる。


(40)製造段階のVEとは

現在製造段階にある既存製品のVE活動のこと。既に図面、仕様書が完成されて おり、各々のコストも決定している製品に対し、果たすべき機能とコストの関係から使 用者にとっての価値を高める機能・コストへと改善を図る活動のこと。図面、仕様書 が完成していない開発段階のVEの方がより効果が大きい。


(41)タスクフォースとは

本来は軍事用語で、特定の任務を遂行するために、一指揮官のもとに一時的に 編成した部隊のこと。企業などでは、特定の課題を達成するために、関係各部門か ら専門家を集めて一時的に編成する組織のことをタスクフォースという。VEの プロジェクトは基本的にはタスクフォースである。


(42)バリューレビューとは

VEを推進する中で、価値目標を達成させるために、制度的にチェックし必要な 対策を実行させること。目標機能の達成を保証する技術レビューと目標コストの達 成を保証するコストレビューから構成される。設計のみのレビューがデザインレビュー であり、バリューレビューは機能とコストの関係を審査する。


(43)経常外コストとは

代替案を実施に移すために新たに発生するコストで、変更の初期段階で一時的に 発生し、生産量に必ずしも比例しない固定コストのこと。図面の変更費用、金型・ 治工具改造費、試作費、テスト費などがこれに該当する。VE独自の用語で、VE 実施手順の詳細評価ステップの年間正味節約額算出時に利用する。


(44)CTCとは

Creative Thinking Courseの略で、創造性開発訓練コースのこと。様々なアイデア を数多く生み出すために、創造性を高める教育コースのこと。この内容を盛り込み、 1959年にはVAP(Value Analysis Program)という名称の定型普及コース(現・ VE技術コースの定型)を公開した。


(45)VE予算とは

VE予算は投入予算と成果予算から成る。前者は一定期間において、VEの適用 を管理するために、またVEを実践するために投入される費用を予め設定した値の こと。一方後者は一定期間において、VEを適用して達成すべき目標のことをいい、 経営目標に基づいて割り付けられる。VEでは目標機能と目標コストを予算化する。


(46)現行コストとは

製品や部品、サービスなどに現在かかっているコストのこと。VEでは機能分野別ま たは機能別に現行コストを配賦する。この現行コストの配賦には消費による配賦、 貢献度による配賦、均等割り配賦などがある。この機能分野別現行コストと目標 コストである機能評価値の差と比からVE対象分野を選定することができる。


(47)原価差異とは

ある原価と別のある原価を比較して生じる差異のことである。これには①標準原価と 実際原価との差異、②見積原価と実際原価との差異、③予定配賦額と実際配賦 額との差異などがある。これらの差異を解決するためにVE手法は役立つ。VEでは この差異の大きなものを選定し、対象にしていくと大きな効果が望める。


(48)機会原価とは

複数の代替案の中から選ばれなかった代替案によって得られる利益は失われること になる。この様に機会損失となる原価をVEでは機会原価という。VE実施手順の代 替案作成の詳細評価で、複数の代替案から1つの案を選択するための経済性評 価において活用する原価である。



【参考文献】
(1)上野一郎:VEハンドブック、公益社団法人日本VE協会、(2007年)
(2)土屋裕:新・VEの基本、産業能率大学出版部、(1998年)